昔ある時期ちょくちょくフェリーを利用していましたが、朝食はバイキング方式で、料金も結構高く、元を取らねばとついつい朝からお腹いっぱい食べてしまっていました。ある時食堂に入った時間が閉店ぎりぎりで、料理らしい料理は殆ど片づけられており、同じ料金を払って「ご飯、大根おろしにちりめんじゃこ、梅干し」(みそ汁もあったかな)という情けない食事をしたことがありました。今日は朝からついてない、と思ったところが、不思議なことにその日一日、極めて体の調子がよかったのです。頭の回転もよく、疲れも溜まらず、仕事もはかどりました。考えてみれば、そんな質素な食事をすることは普段めったになく、朝から動物性蛋白質や緑黄色野菜なども十分摂らねば、と心がけていたのですが、その「貧しい食事」こそ、特に朝食にふさわしいものだったのでは、と気付かされました。一応小学校で栄養について学んだばかりに、そういう「偏った」食事をするのは一種の勇気が要ります。
 エネルギー源としてのご飯、その消化を助ける大根おろし、疲れをとる梅干し、この何の変哲もない日本の一般庶民の朝食にこんな力が秘められていたことに生まれて初めて思い至りました。それ以来、何かある時の私の「勝負メシ」と決めています。

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